100th Anniversary

地区活動の足跡

国際奉仕への取り組み

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対象分野国際奉仕
記入者大阪のロータリー100周年誌編集グループ

1.国際奉仕の源流

国際奉仕はクラブ奉仕、職業奉仕、社会奉仕に続くロータリーの第4奉仕部門で、人道的国際奉仕、国際理解・親善・平和を推進するために実施する全ての活動を言います。国際奉仕には、①人道的国際奉仕活動、②国際レベルの教育および文化活動、③特別月間と催し、④国際的な会合、の四つの分野があります。当地区を含む日本では人道的国際奉仕活動が大きな比重を占めます。
初期のロータリーには現在の人道的奉仕活動を主体とした国際奉仕の概念はありませんでした。しかし、第一次世界大戦中の1917年頃より米国やカナダ、ヨーロッパのロータリークラブが各地の避難民や傷病兵、復員してくる軍人に対するボランティア活動や物資援助を行うようになり、人道的奉仕活動、国際間の理解と親善と平和を推進するという国際奉仕の概念が、1922年に当時の綱領の第6項目として正式に明文化され現在に至っています。
二度にわたる世界大戦を経験し、1945年にはアメリカ国務省から要請を受けて、世界平和を願うロータリアン約50名が国連憲章の原案作成作業に参加しました。これはロータリーの歴史の中でも特筆すべき国際奉仕活動です。

2.人道的国際奉仕活動

2-1.世界社会奉仕活動(WCS活動)

地区で初めてのWCS活動(インド救らい附属病棟)

発展途上国や開発途上国のロータリークラブが資金の制約等で地域社会のニーズを満たす奉仕活動が実践できない場合は、援助を海外の地区やクラブに求めて協力して奉仕活動を行います。これが人道的国際奉仕活動です。
現在のように情報通信技術が発展していない時代には、世界の地区やクラブは発展途上国や開発途上国の人道的支援を要請する地区やクラブの情報を的確に得ることは困難でした。そこで、RIはこれらの情報をまとめてリストアップして開示し、国際奉仕活動をしようとする地区やクラブは、これらの情報を基に支援要請をしている地区やクラブに直接コンタクトし奉仕活動を実施する「世界社会奉仕プログラム」と呼ばれる制度を設けました。
世界社会奉仕プログラムは英語ではWorld Community Service:WCSと称され、WCSを利用した国際奉仕活動は一般的にWCS活動と呼ばれるようになりました。WCS活動を資金的に支援するために、1965年、マッチング・グラントと呼ばれるロータリー財団の補助金制度が設けられ、地区とクラブはこの活動推進のためWCS委員会を設置するよう推奨されました。
それ以降、WCS活動は人道的国際奉仕活動の代名詞として用いられ、マッチング・グラントを用いたWCS活動は1970年代から約40年にわたり人道的国際奉仕活動の主流として重要な役割を果たしました。しかし、情報通信技術や国際化の進展に伴いWCS活動を利用しなくても地区やクラブが独自に海外での情報収集が可能になったため、RIは2011年WCS活動を終了しました。WCSという呼称は無くなりましたが、その精神と活動は各地区、クラブ独自の国際奉仕活動として今も脈々と受け継がれています。

2-2.WCS基金の運用

 当地区では1966年に地区WCS委員会が設置され、当初は地区主導で対象プロジェクトを調査選定し、プロジェクト費用は全てのクラブが会員数に応じて応分の負担をする方式で実施されましたが、1970年代に入り、クラブで独自のプロジェクトを実施しない全てのクラブから2000円/人のWCS基金と呼ばれる拠出金を集め、それを原資として地区主導のWCSプロジェクトを実施するようになりました。
その後、1980年代に入るとWCS基金は5000円/人に増額されましたが、日本経済の発展に伴い海外事業を展開する会員からの情報を基にしたクラブ独自のプロジェクトを実施する機会が増加し、クラブ基盤が確立しWCS基金を拠出するならクラブ独自のプロジェクトを実施しようとする機運が高まり、独自でロータリー財団の補助金、マッチンググラントを利用してプロジェクトを実施するクラブが増えました。
WCS基金制度は地区独自のWCS活動推進の原資として活用されると共に、一方ではWCSに頼らずに各クラブ独自の国際奉仕プロジェクト実施を促進する原動力ともなり、現在でもプロジェクト実施数で全国のトップに立つ当地区の国際奉仕活動の基盤の確立に寄与しました。その後、RIがWCS活動を終了し、新たな補助金制度FVPが導入されたのに伴い2013年にWCS基金制度も終了しました。

2-3.新補助金制度「未来の夢計画(FVP)」の下での国際奉仕活動の展開


 WCS制度を支えたのは1965年に創設されたマッチング・グラントと呼ばれるロータリー財団の補助金制度でした。その申請件数は制度創立から2000年までの35年間には約1万件でしたが、その後の4年間で約1万件の申請があり、ロータリー財団での事務所処理量が爆発的に増加したため、RIは2005年にマッチング・グラントを含むロータリー財団の補助金制度の仕組みを抜本的に見直す「未来の夢計画(FVP:Future Vision Plan)」と名付けた新補助金制度の検討を開始しました。そして、2013年度からFVPが全世界で導入され、新たな補助金制度による人道的国際奉仕活動が開始されました。FVPの骨子は補助金の事務処理手続き、認可権限を大幅に地区に移譲し、より効果的で大きな成果を上げる施策を加えたことです。当地区では、2011年よりFVP委員会を設置し地区導入の準備を進めると共に、FVPセミナーを開催し各クラブへの周知に努めた結果、2013年からの導入にもスムーズに対応することが出来ました。その後も新補助金制度を活用した人道的国際奉仕活動は活発に行われ、現在も全国のリーディング地区の地位を維持し続けて現在に至っています。

2-4.ポリオプラス

人道的国際奉仕活動にはRIが主導するプログラムも含まれます。ポリオ根絶プログラムはその代表的なものです。RIは1979年にフィリピンで600万人の乳幼児にポリオワクチン接種を開始し、それ以降今日まで25億人を超える子供達にワクチンを投与しポリオ麻痺
障がいから救われた子供は500万人以上と言われています。「ポリオプラス」はRI戦略計画の第一優先活動項目に挙げられ、当地区も各クラブに呼びかけ積極的な支援を行っており、RIの最も大きな人道的国際奉仕活動と言えます。

3.国際レベルの教育および文化活動

3-1.ロータリー友情交換

ロータリー友情交換は、ロータリアンやその家族が海外のロータリアンを訪問したり、受け入れたりするプログラムで、ロータリアン個人(家族の帯同も可)が他国のロータリアン
宅に数日間滞在する個人交換プログラム、4~6組のロータリアン夫婦が最長1カ月間受け入れ地区の地域社会を数か所訪問するチーム交換プログラムがあります。RIは国際大会の前後に友情交換を行うことを奨励しています。詳しくは「ロータリー友情交換の手引き」をご覧下さい。

3-2.世界ネットワーク活動グループ

世界ネットワーク活動グループは、共通の関心事項に焦点を当てて国際的に組織されたロータリアンのグループです。ロータリー親睦活動グループ(職業別および趣味別グループ)とロータリアン行動グループ(奉仕活動関連グループ)が含まれます。ロータリー親睦活動グループは、同じ趣味や職業を持つロータリアンとその家族、ローターアクターが集まるグループで、スキューバーダイビング、スキーといった趣味や、医師、弁護士などの職業を中心としたグループまで多岐にわたっています。ロータリアン行動グループは特定分野を専門とするロータリアンとその家族、ローターアクターが集まるグループです。例えばアフリカでのエイズ問題に取り組むグループや出産時の妊産婦の死亡率減少に取り組むグループなどがあります。

3-3.教育活動

 国際ロータリーは様々な国際的な教育活動を実施しています。
(1)留学生への奨学金支給や職業研修制度による国際交流活動
FVP導入に伴う新たな補助金制度では、地区補助金、グローバル補助金を用いて日本から海外への留学生や海外から日本への留学生(いずれも18歳以上)への奨学金の支給が可能となりました。また、職業に関連する技術を学んだり、特定の職業分野において現地の人々を指導する等の目的で職業研修を実施することも出来ます。詳細はロータリー財団の資料をご覧下さい。
(2)ロータリー青少年交換プログラムによる国際交流活動
ロータリー青少年交換プログラムは海外の人と交流し、海外の社会・文化を体験する機会を青少年に提供するものです。詳しくはロータリー青少年交換分野をご参照下さい。
(3)ロータリー平和センタープログラム
ロータリー平和センタープログラムは、世界6か所の有名な大学に平和センターを開設し、国際問題、平和、紛争解決の関連分野における高度な専門知識を学ぶために選抜された人に奨学金を授与し、研究の場を提供するもので、2002年に開設され1100人を越える優秀な人材を輩出しています。
2660地区からは、今までに2名の平和フェローを送り出しています。
2005―07年度 寺西悦子さん(茨木東RC推薦)
2008年にオーストラリア、クイーンズランド大学のロータリー平和センターを卒業。JICA(国際協力機構)での技術研修員受入の仕事を経て、IOM(国際移住機関)のネパールにて人身取引被害者支援、労働移民管理の業務に従事し、2012年からは北部ケニアの難民キャンプ、2019年からはウクライナ事務所で人身取引被害者保護や東部紛争地域での復興支援などに従事。
2019―21年度  山口真理子さん
元国際親善奨学生(米国ジョージワシントン大学の修士課程(国際開発学))。ケニア、カンボジア、バングラデシュにおける国際・地域開発の業務を経て、平和と紛争について腰を据えて学ぶことを決意し平和フェロープログラムへ応募。2021年にスウェーデンウプサラ大学のロータリー平和センターを卒業。
詳しくは平和センタープログラムをご参照下さい。  

4.特別月間と催し

国際ロータリーは各月をそれぞれの奉仕分野やグローバル補助金の重点分野に対応する
特別月間と定め、各分野のテーマに呼応したプログラムや催しを実施するよう奨励して
います。例会や委員会フォーラムでは特別月間のテーマに関する卓話やセミナーが行われ
ます。国際奉仕という視点でこれらの機会を活用することが望まれます。

5.国際的な会合

地区ナイト(ハンブルク国際大会)

アトランタ国際大会の様子

国際的な会合としては、毎年開催される国際大会や近隣諸国との国際交流の場として定期的に開催されている日韓親善会議や日台親善会議があります。ロータリアンとその家族はこのような国際会議に自由に参加出来ます。これらの国際的な会合に積極的に参加し、国際レベルで友情や親睦を深めることが推奨されています。

6.海外クラブとの国際交流

  RIは国際交流・親善の促進策として1960年代から海外のクラブとマッチド(Matched:対等の)クラブの関係を結ぶよう奨励して来ました。当地区でも地区の施策として積極的に取り組み、現在も多くのクラブが「姉妹クラブ」、「ツインクラブ」、「友好クラブ」と呼ばれる海外のクラブと友好クラブ協定を結び相互訪問や共同プロジェクトを実施しています。「ツインクラブ」という名称は国際ロータリー創立100周年に当たる2005年に国際ロータリーが全世界のクラブに「ツインクラブ」を作るように呼びかけて生まれたもので「姉妹クラブ」と同じ意味で使われています。海外クラブとの交流は国際奉仕活動の推進に寄与するだけではなく、クラブ会員の国際感覚、国際性の向上に大いに資するものであり、今後も積極的な取り組みが望まれます。

 

<国際奉仕分野:2660地区の歴史>
1927年 大阪RCが国際親善委員会創設(本格的な活動は戦後のRI復帰以降)
1949年~ 大阪RCが米山奨学生、AFS奨学生等支援(敗戦国日本再生は国際人材の育成と相互理解促進との信念に基ずく)
1954年 大阪南RCとボストンRCがマッチドクラブ協定を結ぶ(地区初の海外ツインクラブ誕生)
1962年 RIにWCS(World Community Service:世界社会奉仕)プログラム創設
1964年 RIよりマッチド地区・クラブの推奨(国際交流・親善の促進推奨)
1965年 RIマッチンググラント制度創設(補助金による国際奉仕活動の促進)
1966年 地区WCS委員会設置 (地区最初のWCSプロジェクトはインド救ライ事業)
1973年 WCS基金創設(2000円@人:WCS用の地区独自の予算枠の確保)
1976年 RIよりマッチド地区・クラブの推奨
1982年 地区国際交流委員会発足(WCS委員会との二本立て:国際交流委員会はツインクラブ、国際交流・親善、国際大会参加促進活動を担務)
1989年 国際交流・平和委員会に名称変更
1991年 RIシェアーシステム導入(国際奉仕活動のRIと地区の財政基盤の仕分け確立)
2002年 DLP導入により地区委員会再編。国際奉仕委員会に名称変更
2005年 ロータリー創立100周年。RIがツインクラブの推奨
2007年 国際奉仕委員会とWCS委員会を統合、国際奉仕・WCS委員会に名称変更
2011年 RIがWCS制度を廃止。FVP(Future Vision Plan:未来の夢計画‐ロータリー財団の構造改革)導入準備のため地区FVP委員会設置
2013年 FVP導入。地区WCS基金廃止
2022年 社会奉仕委員会と統合。国際・社会奉仕委員会に名称変更。

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