カンボジアで歯科医療ボランティア
時期2016.9.16~19
記入者小西康仁 (豊中千里RC)
カンボジアは雨期。機上からは、インドシナ半島を蛇行する茶色く濁ったメコン川が見られた。プノンペンでは、夕方の急なゲリラ雨が、一面白いカーテンのように目の前の景色を遮断し、道路は水浸しで大きな水たまりができる。その水たまりや泥の中のバクテリアにより、足の傷口などからの感染の恐れが在る。ホテルのシャワーの水も濁り、生水は飲めない。衛生管理に注意し、日本からは、登山シューズ、アルコール消毒液、抗生物質、トイレットペーパーそして水を持参した。そして、歯科医療ボランティアに必要な医療器具や歯ブラシ等の資材を調達し奉仕に臨んだ。
早朝、現地スタッフと合流。奉仕メンバーは、マイクロバスに乗り込み、2時間程離れた医療センターに向かう。プノンペン市内は信号がなく、バイクとトゥクトゥクが縦横無尽に走り回っている。電線の張り巡らされた市街を離れて、土と砂利の一本道をひたすら走る。舗装されていない道路では、何度かタイヤ点検が必要とされた。漸く医療センターに到着すると、既に村人達が多勢集まっていた。幼い子供から、鬱金の袈裟に身を包んだ僧侶まで、実に様々な人々が訪れていた。早速に歯科健診を行う。カンボジアには歯磨き習慣がなく、特に子供の虫歯が多いのが懸念された。昨今、海外からの甘味料の多い飲料やお菓子などによる食生活の変化で子供の歯は親世代より悪い状況であった。口の健康は人の一生に関わる事であるので日々の口腔ケア、歯磨き習慣をつけるよう説明し、歯ブラシと歯磨きペーストを渡した。一方で、七海薬剤師からは、個々人の体調を確認して必要に応じて薬が手渡された。これらの記録はID毎に記録整理され、次の医療奉仕に繋がる資料として保管された。カンボジアの医療の現状は、医療知識不足、単に金儲けを目的とした民間療法が横行し、症状とは関係なく大量に高額な薬が投与されて、かえって健康を損ない、人々が薬を買うには財政的には厳しい状況にあるという社会的問題を抱えている。人々は、お金を出し合って助け合いの精神で支えあって生きている。彼らの貧しくとも,人なつこい笑顔が印象に残った。
歴史的なプノンペン王宮の向こうには高層ビル群が林立している。その対象的な風景がカンボジアの今である。寄付を含む資金流入と経済発展、政府から市民まで蔓延する倫理観の欠如,教育の不平等と貧困による格差社会、そんなアンバランスがカンボジアの混迷を深めている。その急速な発展を後押しするのは一帯一路構想を推進する大国中国であろう。
今回の奉仕活動は、2泊3日の短い日程であったが、カンボジアの医療現状を知り、今後の奉仕の指針となる情報を得る事が出来たと思われる。未来を担う子供達が健康に育つ事を願い、今後も日本の優れた医療提供の継続が必要であると思われる。
奉仕参加メンバー:小西康仁会員(現会長)、五條房己会員(医)五條歯科医院理事長)
同伴者:五條弘子、田口賀奈子、中島敬子(敬称略)
現地同行メンバー:七海薬剤師、長田歯科医師、通訳(カンボジア人)